「ステーブルコインは暗号資産の一種」と説明されることが多い。実際、ブロックチェーン上で発行・移転されるトークンという点ではビットコインやイーサリアムと変わらない。しかし、法律上の分類を見ると、話はそう単純でもない。
一般的な用法では「暗号資産の一種」
業界やメディアでは、ステーブルコインは暗号資産(crypto asset)の下位カテゴリとして扱われている。Wikipediaでも暗号資産の項目にステーブルコインが含まれている。技術的に見れば、ブロックチェーン上のトークンであることに変わりはなく、この分類に違和感はない。
日本法では「暗号資産」ではない
2023年6月に施行された改正資金決済法では、法定通貨に価値が連動するステーブルコインは「電子決済手段」として定義された。法律上、「暗号資産」とは明確に別のカテゴリになる。
具体的には、以下の2類型に分けられている。
- デジタルマネー類似型(電子決済手段): 法定通貨の価値と連動した価格で発行され、発行価格と同額で償還を約するもの。発行者は銀行、資金移動業者、信託会社に限定される
- 暗号資産型: 上記の要件を満たさないもの。暗号資産担保型やアルゴリズム型がこちらに該当する
つまり、USDCやUSDTのような法定通貨連動型のステーブルコインは日本法上「暗号資産」ではない。一方で、DAIのような暗号資産担保型は「暗号資産」に分類される可能性がある。
EUでも独自の分類
2024年に全面施行されたMiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)では、ステーブルコインに相当するものとして以下の2カテゴリが定義されている。
- EMT(Electronic Money Token): 単一の法定通貨を参照するトークン。電子マネー機関としての認可が必要
- ART(Asset-Referenced Token): 複数の通貨やコモディティなど、複数の資産を参照するトークン
いずれも「暗号資産規制」の枠組みの中に位置づけられてはいるが、一般的な暗号資産とは異なる要件が課されている。
なぜ分類が分かれるのか
根本的な理由は、ステーブルコインが「技術的には暗号資産だが、経済的には決済手段に近い」という二面性を持つことにある。
ビットコインのような暗号資産は価格が大きく変動し、投資・投機の対象として扱われる。一方、法定通貨連動型のステーブルコインは価格の安定を目的としており、実態としては電子マネーや銀行預金に近い機能を果たす。
規制当局から見ると、「価値が安定した決済手段」と「価格が変動する投機的資産」を同じ枠組みで規制するのは合理的でない。日本やEUが独自のカテゴリを設けているのは、この経済的な実態の違いを法制度に反映した結果と言える。
まとめ
ステーブルコインが暗号資産かどうかは、文脈による。
- 技術的な文脈: ブロックチェーン上のトークンであり、広義の暗号資産に含まれる
- 日本の法律: 法定通貨連動型は「電子決済手段」であり、暗号資産とは別カテゴリ
- EUの法律: 暗号資産規制の枠内だが、独自の要件が課される別分類
「ステーブルコインは暗号資産」とも「暗号資産ではない」とも言える。どちらが正しいかではなく、どの文脈で語っているかが重要になる。