暗号資産の税制をめぐる長年の課題に大きな進展があった。2026年3月31日、令和8年度税制改正関連法(所得税法等の一部を改正する法律)が国会で成立・公布され、暗号資産取引に対する申告分離課税の導入が法的に確定している。さらに4月10日には、暗号資産を金融商品取引法(金商法)上の「金融商品」として位置づける改正案が閣議決定された。
分離課税の概要
新制度では、暗号資産取引の利益に対して20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の申告分離課税が適用される。従来は雑所得として総合課税の対象であり、最大55%の税率が課されていたため、税負担は大幅に軽減されることになる。
対象となるのは「特定暗号資産」、すなわち金融商品取引業者として登録された国内業者が取り扱う暗号資産に限定される。現物取引、デリバティブ取引、暗号資産ETFが対象に含まれ、損失が生じた場合は3年間の繰越控除が認められる。
一方、海外取引所での売買や個人間取引、ステーキング報酬、レンディング利回り、NFTなどは対象外となり、引き続き雑所得として総合課税が適用される。
金商法改正案の閣議決定
税制改正と並行して、4月10日に閣議決定された金商法改正案は、暗号資産の規制枠組みを根本から変えるものとなっている。主な内容は以下の通り。
- 暗号資産を資金決済法上の「決済手段」から金商法上の「金融商品」へ再定義
- インサイダー取引の禁止(新規上場計画やセキュリティ脆弱性情報等が対象)
- 発行者への年1回の情報開示義務
- 無登録販売に対する罰則の大幅強化(拘禁刑を3年以下から10年以下に、罰金を300万円以下から1,000万円以下に引き上げ)
同改正案が今国会で成立すれば、2027年度中の施行が見込まれている。
適用開始の時期
分離課税の適用開始日は「金商法改正法の施行日の属する年の翌年1月1日」と規定されている。金商法改正が2027年度に施行された場合、2028年1月1日以降の取引分から新税率が適用される見通しとなっている。
これまでの経緯
暗号資産の分離課税は、業界団体が長年にわたり要望してきたテーマである。2025年7月にはJCBA(日本暗号資産ビジネス協会)とJVCEA(日本暗号資産取引業協会)が共同で税制改正要望書を政府に提出し、20%の申告分離課税と3年間の損失繰越控除を求めていた。
同年12月には自民党web3ワーキンググループが「緊急提言」を公表し、分離課税化を明記。与党税制調査会が令和8年度税制改正大綱に正式に盛り込んだことで、法制化への道筋がついた。
ブロックチェーン資産に対する税制と規制の両面が同時に動くのは、日本の暗号資産政策において大きな転換点と言える。金商法改正案の国会審議の行方が、今後の焦点となる。